成田闘争とは、日本最大の国際空港である成田国際空港を建設するに当たって発生した社会問題のことです。政府は地元から合意を得るどころか事前説明すら怠り、代替地等の諸準備が一切なされていなかったことから農民を中心とした地元住民の猛反発を招きました。地元農民は土地を失うことや騒音問題への懸念から「三里塚・芝山連合空港反対同盟」を結成し反対活動を開始したのです。
当初は日本社会党や日本共産党などの革新政党からの支援による反対運動でしたが、反対派の主張を無視する政府の強権的な姿勢に対して、反対派農民が次第に「力には力で対抗する」という方針を固めたことにより、既成革新政党は反対運動から引いて行きました。

革新政党に代わって、「暴力革命」を掲げ実力をもってしても政府と対決する新左翼諸派が反対派農民を支援しました。用地買収は停滞したため、政府は土地収用法に基づき行政代執行を1971年に2回実行、機動隊と反対派農民・支援の激しい衝突の末、9月の第二次代執行では警察官3名が殉職したりもしましたが（東峰十字路事件）、ようやく一期工事の用地を取得しました。反対派は1972年に航空妨害を目的とした鉄塔を建てて対抗して、政府は当初の「1972年開港」の断念を余儀なくされました。1977年5月6日にこの鉄塔は撤去され、5月8日に鉄塔の撤去に抗議する反対派と機動隊が衝突し、支援者1名が死亡しました。

1978年3月26日、開港直前になって日本革命的共産主義者同盟を主力とするゲリラが成田空港の管制塔に乱入し、管制塔内の機器を破壊しました管制塔襲撃事件。また、空港の各所から反対派農民を支援する新左翼党派活動家4千人が乱入する「騒乱状態」となりました（成田空港管制塔占拠事件）。このため開港が5月20日まで延期となったのです。

開港後も反対同盟は「百日戦闘宣言」を発し、ゲリラや滑走路の延長線上にアドバルーンを上げたり、タイヤを燃やしての航空妨害が続いたため、警察は厳重な警備を敷きました。空港の安全確保のため、千葉県警察警備部に専従の機動隊「新東京国際空港警備隊」（現・千葉県警察成田国際空港警備隊）が発足したのです。